地元なじみ。
小6*夏祭り
時は進み、小学校6年生の夏休み――今日から塾の夏期講習が始まる。
早川くんの言葉とは裏腹に、あれから私たちは隣の席になることはなかった。
私はこの半年でだいぶ塾に慣れてきて、約20人のクラスメイトの顔と名前は覚え、他の学校の女の子たちとも普通に話すくらいに仲良くなっていた。
そしてなんと、私と同じ小学校の茅ヶ崎 梓(ちがさき あずさ)ちゃんも入塾してくれた。初めての同じ小学校の友達……心強いし嬉しいな。
「こんにちはー」
「藤沢に茅ヶ崎、こんにちは。夏期講習中の席貼ってあるから、それ見て席ついてなー」
「はーい」
塾に着いて先生に挨拶し、先生が指差した座席表を見る。
あ……
『藤沢 早川』
久しぶりに見る隣に並んだ名前を見て、なぜだか嬉しいような……ちょっとムズムズするような……
教室に入ると、すでに早川くんが席にいるのが見えた。
私の席であるはずの隣の席に誰か座っていて、楽しそうに話しているなと思っていたら、その奥にいる早川くんとパチっと目が合った。
「平塚、どいて」
これもこの半年でわかったことだけど、早川くんは同じ学校の平塚(ひらつか)くんと三島(みしま)くんの3人でいつも一緒にいる。
ちょうど今、私の席に座っていたのは平塚くんで、早川くんが移動するように声をかけてくれた。
「あ、藤沢来たんだ。席ごめんね」
「いっいや、こちらこそ話してたところにごめん」
平塚くんがサッと席を立ってくれる。
むしろ楽しそうなところを邪魔しちゃって申し訳ないなって思って、つい謝ってしまった。
「ふっ、なんで藤沢が謝るの」
平塚くんが早川くんの席の前に立って微笑みながら話す。
平塚くんは小学校のクラスには居ないくらい落ち着いていて、大人っぽい男子だ。
早川くんもクラスの男子と比べると大人っぽいけれど、平塚くんはそれ以上で、より緊張してしまう。
さて、授業の準備をしよっと。
バッグからテキストを取り出していると、2人の話が耳に入ってくる。
「ひなたさー、今日休み時間怒られてなかった?何したの?」
「あー……みんなで担任の顔をザビエルの顔に近づけていくゲームしてて」
「は?」
「黒板の端と端に担任とザビエルの写真貼ってさ、その間を進化の過程みたいに5段階くらい似顔絵描いてってさー」
「なんだそれ」
「どの段階で担任の頭頂部をハゲさすかで盛り上がってたら、本人登場で怒られた」
「そりゃそうだわ」
「マジでハゲたらどうするんだ!って」
「そこかよ」
「……ぷっ!」
聞こえてくるその内容に思わず吹き出してしまった。
「……なに笑ってんの」
「ごっごめん。でも面白くて……ふふっ」
早川くんが恥ずかしそうにジロリとこちらを見て言うけれど、くだらなくて面白いからしょうがないよね。
「藤沢もくだらないって思うでしょ、ひなたのこと」
「早川くん、学校だとそんな感じなんだね」
「そーだよ、塾だと静かだけどね」
「うるせー、ってか平塚もだし」
早川くんは照れたような顔をしながら、ムスッとしている。
そっか、2人とも学校ではうちのクラスの男子みたいな感じなのかな。
もし同じ小学校だったら、そんな2人も見れたのかな……なんて思いながら、夏期講習が始まった。