地元なじみ。
「……なんて言おうとしたの?」
「……別に何も」

私は自分でも自覚するほど悪い笑みを浮かべて、ジッと早川くんの顔を見るけれど、全く視線は交わらない。

「聞きたい。いいじゃん、言ってよ」

ちょっと真剣なトーンでお願いしてみる。
普段、早川くんとこんな会話になることなんてないのだから、私も必死である。
私が譲らないとわかったのか早川くんは、はぁー……と深いため息をついたのち、口を開く。

「……可愛い格好、してるんじゃないでしょうか」

後頭部を少しかきながら、やっぱり視線は交わらない。
でも、少し赤くなりながら懸命に紡いでくれた言葉が嬉しい。
何より、そういう感情が早川くんにあったんだなと、勝手に嬉しくなる。

「ふふっ……なんで敬語なの」
「うるせー」
「ねえねえ、早川くんは何色の浴衣が好き?」
「は?知らねー」

どさくさに紛れて私も思い切った質問をしてみたのだけれど、予想通り答えてはくれなかった。

でも、すごく幸せ。
やっぱりまた、今日もこの瞬間も、この目の前の彼に恋をする。
夏の暑さとは全然違う、温かい気持ちに包まれて、私たちはみんなと合流するべくイルカショー会場を後にした。
< 78 / 92 >

この作品をシェア

pagetop