地元なじみ。
バスが来る音が聞こえる。もうすぐお別れだ。
今日……いっぱい早川くんにドキドキとか幸せとか優しさをもらった。
私は、何か返せてるかな……いや、私からなんていらないかもしれないけれど……
けれど、お礼だけでもきちんと伝えたい。

「早川くん」
「ん」
「今日いっぱいありがとう、すごい楽しかった」
「おー」
「イルカショーも花火も今も……みんなといるのも楽しいけど、早川くんといられてもっと楽しかった、暑い中ありがとう」

照れくさいけれど、きちんと目を見て笑顔で伝える。

早川くんの顔が明るく照らされたなと思ったら、バスが来た。
バスを待つ列が進み始めた時、一緒に歩きながら早川くんが呟いた。

「紺も似合うんじゃない……」
「え?」
「浴衣!そっちが聞いたやつ」

――早川くんは何色の浴衣が好き?
イルカショーの時のことを覚えててくれたんだ。
最後の最後にまた胸がぎゅうってなる。

「へへっ、また行こうね」

そう言って私はバスに乗り込んだ。早川くんは顔を赤くしてそむけている。
けれどやっぱり、発車の時に手を振ると、目は合わないながらも軽く手を上げてくれた。

幸せで嬉しくて、もっと好きになって苦しくて。

この暑さや生温い風や、夏の香り、今日の景色……毎年夏が来るたびに思い出すのだろうなと思う。

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