地元なじみ。
「ん~おいしいね」
「な」

自主練の後、私たちは駅前にこの前オープンしたパスタ屋さんに来ている。
中学生にも優しい値段設定で、おいしいから、梓ちゃんたちともまた来よう。

早川くんは和風パスタ、私はカルボナーラ。和風パスタ好きなのかな……

注文するところ、食べるところ……全てが初めて知る顔。
早川くんと向かい合って座ってご飯を食べている。
片思いが始まった頃からすると、信じられない光景だ。

「……あ、この曲」
「知ってんの?」
「うん、この前テレビで聞いて気になってたんだ。このバンドはこの曲しかまだ知らないんだけど……」

店内のBGMで聴こえてきた音楽に耳を傾ける。
心地良いテンポでやっぱりいい曲だなと聴き入ってしまう。

「他にもいい曲あるよ、このバンド」
「え、早川くん知ってるの?」
「うん、よく聞いてる」
「そうなんだ、私もダウンロードしてみる」

早川くんも好きなんて、共通の話題がまた増えて嬉しいな。
早速ダウンロードしようと、スマホのミュージックのアプリを開いてみる。

「これと、これと……この辺りもオススメ」
「あ、ありがとう……」

早川くんが少し身を乗り出して、スマホの画面に顔を近づける。
早川くんにとってはなんてことない距離なのかもしれないけれど、私の鼓動はまた一気に速くなる。

せっかく早川くんが教えてくれているのに、意識のほとんどがスマホではなく、近づく顔に囚われていた。
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