御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「……れん、さん、もっと……」

 ただ唇を重ね合わせているだけなのに、気持ちがいい。
 つい、彼の袖を引いてしまう。自らキスをねだるだなんて、はしたない。
 本物の夫婦のような触れ合いを求めるなんて、間違っている。

 脳裏でちらりと結婚のときに結んだ契約を思い出す。
 いま、それ自分で破ろうとしていた。

「千尋」
「わっ」

 後頭部を掴まれ、深く口付けられる。最初から呼吸を奪うかのような動きで、ぬるついた舌が咥内に滑り込んできた。

「……っ、ぁ……」

 ぢゅうっと舌先を吸われて、鈍い痛みが走る。舌がくたくたになるまで中を好き勝手に蹂躙されて、唇が離れたときには息も上がっていた。

「千尋、俺の肩に掴まって」
「きゃっ……!」

 ふわりと体が浮いて、彼に抱き抱えられる。
 彼が向かったのは寝室で、広いベッドの上に丁寧に降ろされた。

「千尋」

 また彼の唇が降ってきて、目尻や鼻筋、頬へとキスを送られる。
 最後、もったいぶるように唇の端に口付けられて、無意識に口を開いたら、すぐに舌を絡め取られた。

「んっ……ぁ、蓮、さん……」

< 118 / 139 >

この作品をシェア

pagetop