御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「……なるほど。実家である町工場がつぶれる、と」
東北の田舎で小さな町工場をしていること、元々経営難であったがついには潰れてしまうこと、既に母は他界しており残った父が心配であることを話す。
彼はときおり相槌を打ちながら、私の話を真剣に聞いてくれた。
「いずれはこうなるってわかっていたんですけどね。でも、そのときがきて、急に電池が切れてしまったというか……。もう頑張るのにも疲れてしまったというか……」
はぁ、と吐き出した息に重さが伴う。
極力悲壮感を与えないように話したつもりだったけれど、彼の表情は辛そうに歪められていた。
「よく、頑張りましたね」
「そう、でしょうか……」
「家のために仕送りもしていたんでしょう? バイトまでして。きっと、あなたのお父様も感謝していますよ」
「……でも、結果的に父の会社はっ」
カウンターの上で組んでいた手の甲にぽたぽたと涙が落ちる。
ひくっ、と喉が引き攣って、無理やり笑おうとしても口角は下がったままだった。
「俺は、ひたむきに頑張ってきたあなたのことを尊敬します。誰かのために頑張れる人は強い」
「九条さん……」