御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「本当に、それだけ?」
「へ……?」
「料理と温泉以外に、もっといろいろあっただろ」

 そう言われて、忘れようとしていたことを思い出す。
 黙りこくった私を見て彼は満足そうに笑うと、私の手からカップを奪った。

「さて、ここからは夫婦の時間だ」
「もうずっと夫婦の時間……では?」

 迫ってくる彼にあっさりと押し倒される。

 ――恋愛感情は持たないこと
 ――夫婦生活はしないこと

 私が取り決めた約束事が反故になる。
 この場合、私たちの結婚生活はどうなってしまうのだろう。

 気になるのに、視界いっぱいに迫ってくる彼の顔から逃れられない。

 私は彼の首に腕を回すと、自分でも自覚することなく彼の体を引き寄せていた。
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