御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「……もうすぐかな」
「そうですね」

 彼が、膨らんだ私のお腹を撫でる。

 彼の、本物の妻になってもう三年が経つ。
 無事に菜摘が生まれ、父の会社も持ち直し、すべてが順調に回っていた。
 彼も彼で自分の会社を経営しつつ、最近では九条グループの仕事にも前向きに取り組むようになっている。
 まだ正式に事業を引き継ぐつもりはないらしいけれど、ゆくゆくは彼のお兄さんである蘭さんと一緒に頑張っていくらしい。

 いまでは私も蓮さんの妻として、必要であれば彼について表舞台にも出るようになっている。

 もう、あの頃のようにおどおどすることもなく、胸を張って彼の妻だと言えるようになった。

 そうしていま、お腹にはまた新しい命が宿っている。
 そう遠くないうちに、力強いうぶ声が聞けるはずだ。

「早く会いたいな」
「蓮さん、親バカなところありますもんね」
「千尋だって。言っておくけど、俺は千尋のことも愛しているから。千尋も子どもばかりにならないように」
「わかってますよ。私も、蓮さんのことを愛してますから」

 そこで会話が切れて、見つめ合う。

 彼の、愛おしさを煮詰めたような甘い瞳がきゅうっと細められて、まるで壊れ物を扱うみたいに優しく唇を奪われた。
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