御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 ◇

 縁談の承諾をしてから、顔合わせの日があっという間に来てしまった。

 地元の美容院で髪をセットしてもらい、着付けができるという近所のおばさんに着物を着せてもらって、タクシーで約束のホテルへ向かう。

 地元一番のホテルにもかかわらずこじんまりとしているのは田舎ゆえだろう。
 顔合わせの広間は階段を上がった先にある鶴の間で、もう既に相手も到着していると聞かされた私は、父と共に急いで二階へ向かった。

「本当に大丈夫か、千尋」
「うん。もう、迷いはないよ」

 どんな人であろうと、少々のことであれば受け入れてみせると広間に足を踏み入れる。
 私は広間に入ってすぐさま丁寧に頭を下げた。

「……はじめまして。本日はよろしくお願いいたします」

 さぁ、会社を援助する代わりに私を娶りたいなどという条件を突きつけた人がどんな男なのか。

 しっかりとこの目で見定めようと顔を上げた私は、そこに立っている男性を見て目を丸くした。

「こんにちは、星名千尋さん」
「どう、して……」

< 29 / 139 >

この作品をシェア

pagetop