御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
九条グループといえば、父の言う通り日本経済を支える御三家のひとつだ。
親族には政界の人間もいるほどで、金融、不動産、医療、インフラに至るまで、名前を聞かない日はないといっても過言ではない。
名だたる大手企業が九条グループの傘下についている。九条グループからの出資によって倒産しかけた会社を復活させ、上場まで導いた功績もあると聞く。
まさか目の前に座る人が、それほど大きな会社を動かしている一族の人間だとは思わなかった。
九条なんていう苗字の人はそれなりにいる。ちょっと珍しいかも、とは思ったし、あの有名なグループの……と思わないこともなかったけれど、そこの御曹司だとは夢にも思わなかった。
現実離れした出来事にぼんやりと二人の話を聞いていると、九条さんと目が合った。
「あぁ、お父様とばかり話してしまってすみません。どうぞ、温かいうちに食事にも手を付けてください」
「は、はぁ……」
バーでは肩が触れ合うほどの距離にいたのに。
テーブルを介して真正面にいる彼が、急に遠い存在のように見える。
私は湯呑に手を付けると、どうしていまさら田舎の町工場に出資を申し出たのか彼に尋ねた。
「私はいま九条グループを出て、完全に独立した会社を立ち上げています。最先端医療分野の会社で、精密医療機器の開発をしています。少し前までは海外に発注をかけていたのですが、ニッチな部品の少量生産となると対応が難しく……。そこで、国内で生産できるところがないか探していたんです」
親族には政界の人間もいるほどで、金融、不動産、医療、インフラに至るまで、名前を聞かない日はないといっても過言ではない。
名だたる大手企業が九条グループの傘下についている。九条グループからの出資によって倒産しかけた会社を復活させ、上場まで導いた功績もあると聞く。
まさか目の前に座る人が、それほど大きな会社を動かしている一族の人間だとは思わなかった。
九条なんていう苗字の人はそれなりにいる。ちょっと珍しいかも、とは思ったし、あの有名なグループの……と思わないこともなかったけれど、そこの御曹司だとは夢にも思わなかった。
現実離れした出来事にぼんやりと二人の話を聞いていると、九条さんと目が合った。
「あぁ、お父様とばかり話してしまってすみません。どうぞ、温かいうちに食事にも手を付けてください」
「は、はぁ……」
バーでは肩が触れ合うほどの距離にいたのに。
テーブルを介して真正面にいる彼が、急に遠い存在のように見える。
私は湯呑に手を付けると、どうしていまさら田舎の町工場に出資を申し出たのか彼に尋ねた。
「私はいま九条グループを出て、完全に独立した会社を立ち上げています。最先端医療分野の会社で、精密医療機器の開発をしています。少し前までは海外に発注をかけていたのですが、ニッチな部品の少量生産となると対応が難しく……。そこで、国内で生産できるところがないか探していたんです」