御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 彼の話をまとめると、元々ホシナ工業所のことを知っていたらしい。そして、数年前から経営が悪化していたことも。
 なんとか救いの手を差し伸べつつ、自分の要望を満たせないかと奔走していたらしいが、無尽蔵にお金が溢れてくるわけではない。
 いろいろ整えていたら出資の申し出がこの時期になったそうだ。
 そうして調べていくうちに、ちょうど顔なじみの女性がその工業所の娘だと知った。
 ならば今回の縁談ごとどうか、と父に話を持ちかけたようだ。

 どこからどこまでが本当の話かわからないけれど、とにかく父がいる間は細かく追求しないことにした。

「そうでしたか……。詳しくお話いただき、ありがとうございます」
「いえ。いつも顔を合わせていたのに、素性を隠すようなことをしてしまい申し訳ございません」
「……なんだ、お前たち知り合いだったのか?」

 父が口を挟む。
 九条さんはにこやかに頷くと、実は都内のバーで何度も顔を合わせていたことを話した。

「そうか、それなら変に気にする必要もなかったな」
「ちょっと、お父さん……!」
「縁談の話があると伝えたとき、お前、寂しそうな顔をしていただろう。てっきり、誰か好い人でもいるのかと思ったんだが……」
「なっ……!」

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