御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 なるほど、契約妻としての制約があるらしい。
 浮かれていた気分が一気に現実へと引き戻された。

「俺があなたに望むことは三つです。ひとつ、契約妻であっても必要に応じて、妻として振る舞うこと。ふたつ、妻である以上この家で生活してもらうこと……は、問題なさそうですね。そして最後、契約は一年ごとに見直すこと。途中の不履行は認めない」

 彼が契約書と銘打った紙をつらつらと読み上げる。
 お飾り妻であっても、この家で生活し、外で妻として振る舞うこと、そして何があっても一年はこの関係を解消しないことを条件としたいらしい。
 もっと突拍子もないことを言われると思っていた私は拍子抜けしてしまった。

「あの、これだけですか……?」
「はい、これだけです。あと、お願いにはなりますが、今後は普通に話してもいいですか?」

 今の話し方だと距離を感じると言われ、こくこくと頷く。
 早速、彼にこれで大丈夫? と言われて、そのギャップに不覚にもときめいてしまった。

「大丈夫です……。あっ」
「すぐには変えなくても大丈夫。でも、せめて名前では呼んでほしいかな」
「……わかりました」

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