御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 この五年間、私は死に物狂いで家のために頑張ってきた。そこに後悔はない。ただ、いま、唯一の拠り所であった町工場が消える。

 父と、母と、私の思い出ごと消えようとしている。
 それどころか、明日の行く末すら怪しい。

 全盛期の頃より従業員は少なくなったけれど、彼らにも生活はある。
 優しい父は売れるものをすべて売って、借金の返済と従業員への施しに充てるだろう。自分の生活を切り捨ててでも、そうするはずだ。


 そうなったときに、父は、私の唯一の居場所は――。


 そこまで考えて、私はパソコンの電源を強制的にシャットアウトした。

 ――もう、頑張ることに疲れちゃった……。

 誰もいないオフィスでため息をつき、鞄の中に私物を詰め込む。
 言われた通りオフィスの電気を落としたら、一瞬で部屋が真っ暗になってしまった。まるで私の人生みたいだ、と虚しくなってくる。

 きっと、今後のことを思えば、私も一度実家に帰るべきだろう。
 そもそも、この仕事を続けられるのかもわからない。
 どうにかこうにか地元へ帰り、父を支えるべきかもしれない。

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