御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 お風呂へ行くと行って部屋を出ていった彼を見送り、私は大きなベッドの前で立ちすくむ。
 今からでも床で……と思ったけれど、そんなことをしたら彼が怒ってしまいそうだ。
 ここは早々に寝支度を済ませて、眠ってしまうのが緊張しなくていいだろう。

 そう思った私は、急いで寝支度を済ませ、言われたとおりにキッチンの照明だけは落として、彼のベッドに潜り込んだ。

「…………」

 部屋に入ったときから思っていたけれど、彼の部屋のルームコロンの匂いなのか爽やかな香りがする。
 ベッドからも同じ匂いがして、寝付けそうになかった。

 ――どうしよう、眠れない……。

 なるべくギリギリまでベッドの縁に身を寄せて、狭いスペースの中でころころと寝返りを打つ。
 何度も何度も体勢を変え、やっと眠気がやってきたところで、ガチャッと寝室のドアが開いた。
 静かな足音がして、ベッドまで彼が近付いて来ているのがわかる。
 壁際を向いて寝ているから九条さん――あらため、蓮さんに私の顔を見られることはない。
 大きな掛け布団がめくれ、マットレスが深く沈み込んだ瞬間、息が詰まった。

「まだ寝てないだろ?」
「……っ」
「あれ、もう寝た?」

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