御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「……なに」
「あっ、もしもし蓮? おはよう、いまパパも近くにいるんだけど」

 スピーカーから筒抜けで女性の声がする。
 電話をかけてきたらしい女性は、蓮さんが相槌を打つ隙を与えぬまま、一方的に話し始めた。

「蓮、結婚したんでしょ? なんで、ママに言わないのよ〜。しかももう向こうには挨拶を済ませたって言うじゃない! 早く私にも紹介してよ!」
「……………」
「ちょっと、れーんー。返事は?」
「……………」
「まぁ、いいわ。そういうわけで、今からパパと蓮の家に行くから」
「……は?」
「というか、もう向かってる♡」

 女性の楽しそうな笑い声とは裏腹に、彼の表情がどんどん険しいものになっていく。
 蓮さんは勢いよく布団をはぐと、来るな! と叫んで電話を切った。

「……あの、大丈夫なんですか?」
「あー……、聞こえてた……よな……」
「はい。蓮さんのお義母様とお義父様が来ると……」
「最悪だ……」

 ハァ、と彼がため息をついて、スマホをベッドに放り投げる。
 タイミングを見計らったかのようにまたしても携帯が鳴った。ディスプレイには、おそらく彼の母親の名前が表示されている。

「出なくて大丈夫ですか?」
「どうせ母からだ」

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