御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
 さすがに子連れで買い物は大変だろう。
 楓くんに手を伸ばして抱っこを変わると申し出たけれど、そのまま連れて行くと言われてしまった。

「本当に大丈夫ですか?」
「大丈夫もなにも、楓と千尋を二人きりにするほうが心配だから」
「……そう、ですよね……」

 私には育児経験もなければ、小さな姪っ子や甥っ子がいるわけでもない。
 おまけに彼の価値観や好みすら把握できていない契約妻なのだ。
 そんな女に大切な子を任せられないだろう。

 密かに落ち込んでいると、違うから、と彼に頭を撫でられた。

「千尋のことを信頼してないからじゃない。むしろ、楓が懐きすぎるから……」
「懐きすぎると、よくないんですか?」
「……とにかく、千尋には先にお昼の準備をしてもらいたい。そのとき、一人のほうが動きやすいだろうから」

 楓くんと買い物に行っている間、下準備を進めてほしいらしい。
 信頼されていないわけではないと知って、ホッと胸をなで下ろした。

「わかりました。できる範囲で進めておきます……が、メインを何にしましょうか……」

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