御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「…………そうして、王子様とお姫様は幸せに暮らしましたとさ」

 おしまい、と表紙を閉じる。
 傍で聞いていた楓くんは意外にもお利口さんで、最後まで静かに話を聞いていた。

「次はこれ!」
「はいはい」
「あとねっ、……あ、」

 ぐうっと楓くんのお腹から大きな音が聞こえてくる。
 すぐ傍にいた蓮さんと顔を見合わせると、くすくすと笑った。

「そろそろお腹すいたな」
「そうだね。楓くん、ご飯にしよっか」
「うん! ごはん、たべたい!」
「食べれないものとかある?」
「ぴーまんと、にんじん」
「好き嫌いはよくないな」
「すききらいじゃないもん。たべれないだけだよ」
「同じだろうが」

 私を挟んで言い合う二人をなだめて、ぐずりだして抱っこをせがむ楓くんを抱き上げる。
 すると、彼が私から引き剥がすように楓くんを抱き上げた。

「こら」
「蓮やだ! ちひろがいーの!」
「ダメだ」

 ぶうぶうと文句を言う楓くんを抱き上げ、蓮さんがソファーから立ち上がる。

 そういえば冷蔵庫には何があるんだろうと思ってキッチンへ向かった私は、野菜室の扉を開けて絶望した。

「見事になにも入ってませんね……」
「そもそも自炊はあまりしてないから……」
「私、買ってきましょうか?」
「いや、俺が行く」
「じゃあ、楓くんとお留守番してますね」

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