御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「おいおい、蓮。女性を泣かすたぁ、感心しないね」
「別に泣かせては……ないはず。いや、扉を開けたのは俺だから泣かせたのは俺か……?」

 言いながら彼がスツールをくるりと回して私に向き合う。
 彼はスツールから降りると、私の足元に跪いた。

「痛みはありますか?」
「あ、えっと、もう大丈夫です……! ちょっとぶつかっただけですし、パンプスも丈夫なんで!」
「でも、泣くほど痛かったんですよね……?」
「いえ、そんなことは……。って、ちょっと待って……!」

 彼が私の足首を持ち上げる。
 足がぷらりと浮いている状態だから、パンプスなんてすぐ脱げてしまうわけで。
 ころん、と靴が床に転がった。

「血が出ている……」
「うそっ!」
「本当にすみません。ハンカチ……で、どうにかならないか……」
「あの、私、絆創膏あるのでお気になさらず……」
「ですが……」
「おい、蓮! 女性の足をいきなり掴むやつがあるか!」
「いっ!」

 ビュンとおしぼりが飛んできて、蓮と呼ばれた男の頭に直撃する。
 彼はすぐさまおしぼりを掴むと、今にも投げ返さん勢いでバーテンダーの男性を睨んだ。

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