御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「それで、話っていうのは?」

 それぞれに飲み物を出され、蓮さんがウィスキーのロックに口をつける。
 私の前には紫色に染まったグラスを置かれた。

「蓮にも四月に行われる九条グループの会合に出てほしくてなぁ」

 お義父様の話を聞いた瞬間、蓮さんの指先がぴくりと跳ねる。
 彼はため息をつくと、苛立たしげにカウンターを爪で弾いた。

「断る。何度も言っているが、俺は九条グループを出たんだ。完全に独立している」
「そうは言ってもなぁ。いまは俺と蘭でやっているが、いずれは俺だっていなくなる。そうなったとき、蘭だけに任せるわけにもいかない」
「手広くやりすぎなんだよ。いくつか事業を売れ」
「それはしかねる」

 九条グループの規模を思えば、蘭さんだけでグループ全体を動かしていくのは大変だろう。
 それに、蓮さんが経営している会社を思えば、このまま九条グループの傘下に入って、グループ全体で事業を育てたほうがいいのも頷ける。
 だけど、蓮さんはお気に召さないようだった。

< 89 / 139 >

この作品をシェア

pagetop