御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「俺は自分の力だけでやりたいんだよ。だから、いつかグループに入って……なんてことも考えていない」
「そうは言ってもなぁ……。少なくとも、お前の結婚報告だけはせんと……」

 九条グループの御曹司として、最低限の挨拶だけはしろと言うことらしい。
 それに、まだ結婚したことを公にしていないのもあって、まだまだ見合い話がきて困るのだとお義父様が言った。

「断り続けるのも大変だから、早めに千尋さんを奥さんだと公表しておけ」
「なるほど、そういうことなら」

 なぜか蓮さんの機嫌が持ち直す。
 彼は私のほうを見ると、一緒に会合に参加してほしいと頭を下げた。

「も、もちろんです……! 参加しますので、頭を上げてください」
「よかった。千尋の負担になってしまうかもしれないけど……、一緒に来てくれると助かる」
「負担だなんて……」
「いや、それなりに覚悟はしておいたほうがいい」
「覚悟……?」
「コイツ、それなりにお嬢さん方にモテるから。独り身だってんで、見合い話があとを絶たなくてなぁ……」
「いまからそんな脅すようなことを千尋に言うな」
「はいはい」

 話はまとまったと言わんばかりにお義父様が下がっていく。
 蓮さんは私の手を握ると、必ず俺がなんとかするからと言ってくれた。

「何かあってもフォローはしっかりする」
「ありがとうございます。頑張ります」

 むしろ、このために契約妻になったのだ。
 防波堤になるくらい、問題ない。やっと私と結婚したことのメリットを彼に与えられる気がして嬉しくなる。

 私は濃いめに作ってもらったカクテルを飲むと、お任せくださいと契約を取り交わすビジネスマンみたいに彼の手を握り返した。
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