御曹司の契約妻が本物の妻として愛されるまで
「あら、こんなところにいましたの」

 ふと頭上から声が振ってきて顔をあげる。
 そこには蓮さんの腕を抱き、強引に彼を連れて行った早坂さんの姿があった。

「彼ならしばらく戻りませんよ」
「そう、ですか……」
「ほんと、品も華もない人。彼と結婚しただなんてホラを吹かないでちょうだい」

 きつく睨めつけて、私の右手首を掴む。
 無理やり引っ張られて、私はバランスを崩しながら立ち上がった。

「これだって……。蓮様にねだったのかしら? どうせ、お金目当てで近付いたんでしょうけれど……。それにしたって、どうしてあなたみたいなのを選んだのかしら……」

 ――お金目当てで近付いたわけじゃない。

 そう反論したかったけれど、父の会社を立て直してもらう代わりに契約妻として形ばかりの結婚をしたのだ。
 彼女の言う通り、お金目当てだと言われても否定できなかった。

「彼があなたを妻に選ぶなんて思えないわ。それに、これも彼が用意したものとは思えない。これを送るほどの価値があなたにはないもの。だって私、あなたの顔を今まで見たことがないから。有名どころのご令嬢であれば、見知っているはずだもの」

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