【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり

「夏帆、夏帆っ」

柊慈に揺らされて夏帆は目を開けた。

「大丈夫か?」

柊慈が心配そうに夏帆を覗き込んでいる。
枕には涙を吸い取った後が残っている。
それをみて自分が泣いていることに気が付いた。

「あ…」
濡れる頬をぬぐいながら起き上がる。

「夢を見ていた。お母さんの…」

すると柊慈の動きが止まる。

「母親の?」

「もっと柊慈さんを頼りなさいって」

なぜか神妙な顔つきな柊慈は言葉がでない。

「懐かしかった。お母さんが生きていたらあんな風に歳を重ねていたのね。夢でも嬉しい」

夏帆は嬉しそうに微笑み、そして泣いた。
ただ静かに柊慈は夏帆を抱き寄せ全身で包み込んだ。

「夏帆を励ましに来てくれたんだ。よかったな…」
「…うん」

夢の中の母でもいい。
母からの言葉には自分を前向きにさせてくれるエネルギーであふれている。

もうきっと何があっても大丈夫。
そう思わしてくれる不思議な出来事だった。



帰りの船の中。

「悪いな。おばぁの体調が悪くて会いにいくのが無理だった」
船長がお詫びを入れに夏帆のもとにきてくれた。
「いいえ。お気になさらないでください」
夏帆は手をふってそういった。

「私、島で逢いたい人に逢えたんです。だから、ここにきて本当によかったって思っています」

夏帆は満たされた笑顔を見せた。
船長は少しだけにこっとして、
「ならよかった」
と言ってくれた。




「柊慈さん…。2本線が出た」

家に帰り着き母のアドバイス通りに妊娠検査薬で試した。
すると今回は、はっきりと2本線が出ていた。つまり妊娠『陽性』の判定だった。

二人は感動のあまり、しばし言葉がでない。

そして柊慈が無言でゆっくりと両腕を大きく夏帆に広げた。
夏帆もジワジワ喜びが湧き出てきてその腕に飛び込んだ。

「「やったー!」」

二人抱き合って喜んだ。


「すごいぞ。願いが一気に叶った!」
柊慈が興奮を抑えながらそう言った。

「霧島神宮でのお願い事って赤ちゃんが欲しいってことだったの?」

「…うん」
柊慈は少し間をおいて答えた。

「そうかー。すごいねー」
夏帆は頬を上気させて喜んだ。


実は柊慈の願い事は2つあった。
1つは赤ちゃん。
もう1つは―――

(これは俺の心の中にしまっておこう。
 夏帆に言ったら感涙騒動になりそうだから)

柊慈はもう一度、夏帆を強く抱きしめる。

「俺が夏帆と赤ちゃんを守るから」
「私だって、柊慈さんと赤ちゃんを守るんだから」

二人はお互いの顔を見合って、ふっと笑った。
そしていつもの愛しているのサイン。
お互いの唇を重ね合わせるのだった。








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