【番外編】あなたが白制服に着替えたら、それが愛のはじまり
「夏帆、夏帆っ」
柊慈に揺らされて夏帆は目を開けた。
「大丈夫か?」
柊慈が心配そうに夏帆を覗き込んでいる。
枕には涙を吸い取った後が残っている。
それをみて自分が泣いていることに気が付いた。
「あ…」
濡れる頬をぬぐいながら起き上がる。
「夢を見ていた。お母さんの…」
すると柊慈の動きが止まる。
「母親の?」
「もっと柊慈さんを頼りなさいって」
なぜか神妙な顔つきな柊慈は言葉がでない。
「懐かしかった。お母さんが生きていたらあんな風に歳を重ねていたのね。夢でも嬉しい」
夏帆は嬉しそうに微笑み、そして泣いた。
ただ静かに柊慈は夏帆を抱き寄せ全身で包み込んだ。
「夏帆を励ましに来てくれたんだ。よかったな…」
「…うん」
夢の中の母でもいい。
母からの言葉には自分を前向きにさせてくれるエネルギーであふれている。
もうきっと何があっても大丈夫。
そう思わしてくれる不思議な出来事だった。
♢
帰りの船の中。
「悪いな。おばぁの体調が悪くて会いにいくのが無理だった」
船長がお詫びを入れに夏帆のもとにきてくれた。
「いいえ。お気になさらないでください」
夏帆は手をふってそういった。
「私、島で逢いたい人に逢えたんです。だから、ここにきて本当によかったって思っています」
夏帆は満たされた笑顔を見せた。
船長は少しだけにこっとして、
「ならよかった」
と言ってくれた。
※
「柊慈さん…。2本線が出た」
家に帰り着き母のアドバイス通りに妊娠検査薬で試した。
すると今回は、はっきりと2本線が出ていた。つまり妊娠『陽性』の判定だった。
二人は感動のあまり、しばし言葉がでない。
そして柊慈が無言でゆっくりと両腕を大きく夏帆に広げた。
夏帆もジワジワ喜びが湧き出てきてその腕に飛び込んだ。
「「やったー!」」
二人抱き合って喜んだ。
「すごいぞ。願いが一気に叶った!」
柊慈が興奮を抑えながらそう言った。
「霧島神宮でのお願い事って赤ちゃんが欲しいってことだったの?」
「…うん」
柊慈は少し間をおいて答えた。
「そうかー。すごいねー」
夏帆は頬を上気させて喜んだ。
実は柊慈の願い事は2つあった。
1つは赤ちゃん。
もう1つは―――
(これは俺の心の中にしまっておこう。
夏帆に言ったら感涙騒動になりそうだから)
柊慈はもう一度、夏帆を強く抱きしめる。
「俺が夏帆と赤ちゃんを守るから」
「私だって、柊慈さんと赤ちゃんを守るんだから」
二人はお互いの顔を見合って、ふっと笑った。
そしていつもの愛しているのサイン。
お互いの唇を重ね合わせるのだった。