勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
 遠慮がちに隣に腰を下ろし、苺味の飴をぽいっと口に放る彼を見やる。

 やっぱり、仕事モードのときとは全然違う印象だ。飴を転がしている今も、気が抜けたように表情がふにゃっとしているし。親しいわけでもない私に対してもこんな調子だし、誰とでも仲よくなれそう。だからあんな噂が立つのかもしれない。

 ありがたく飴をいただいて密かに観察する私の横で、彼はまたカメラを構える。正面にあるのは、寒々しい冬の庭を明るく彩っているパンジーやプリムラ。

「今日は気持ちいいねぇ。花も綺麗だし」

 ピンクや紫、黄色の花々に向けてシャッターを切りながら彼が言った。そしてプリントされたそれをしばし見て、「ん、うまく撮れてそう」と私に差し出してくる。

 白いフィルムにうっすら浮き出た画像が徐々にはっきりしてきて、一分ほど経つとポストカードのようにおしゃれな写真に仕上がった。

「わぁ……綺麗! かわいいですよね、パンジーとプリムラ」
「へえ、花に詳しいね。さすが」
「さすがって、詳しそうに見えます?」
「勝手なイメージだけどね。社長令嬢ともなると、華道とかピアノとか習っていそうだなって。君の名前にも入ってるくらいだし」

 ぽかんとする私に、彼は「花恋ちゃん、でしょ」と名前を口にした。

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