勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
 なんで知ってるの!?と一瞬驚いたものの、そういえばこの間名刺を渡したっけ、とすぐに納得する。

 私の下の名前まで覚えていたんだ。それはうれしいけれど、私は彼がイメージするようなお嬢様ではないので、なんとなく決まりが悪くて苦笑を漏らす。

「私、花を見るのは好きなんですが、ズボラなので生き物は育てられないんです。花の水やりはすぐ忘れちゃうし、〝たまごっぴ〟も毎回お世話不足になって死なせちゃってたし……」

 昔からある卵型の携帯育成ペットを思い出しながら言うと、先生はぷっと吹き出した。

「ははっ、わかる。俺もああいうの苦手」

 おかしそうに笑う少年みたいな彼に、ほんの少し胸が高鳴った。前回の凛々しい姿とはやっぱり違う。

 そんな彼は、私が持つ写真を指差して言う。

「写真はよければあげるよ」
「いいんですか? ありがとうございます」

 遠慮がちにいただいたそれを、私はほくほくしながら眺めて言う。

「先生、写真撮るのお上手ですね」
「そう? なんか好きなんだよね。形成外科ではビフォーアフターの写真を撮るのが日課だから、カメラが趣味になる人多いんだよ。俺みたいに」
「ああ、なるほど……!」

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