勘違い一夜から始まる極甘策士なドクターの激愛婚〜偽装結婚は旦那様の甘い罠でした〜
──高校二年の夏、私は密かに磯ヶ谷くんというクラスの男子に恋をしていた。
中学から一緒で、高校では二年に上がるときに行われたクラス替えでまた一緒になった彼。きりっとしたクールな顔立ちと、ツンツンした性格で結構ズバッとものを言うので、最初は少し怖い印象があった。
でも話せばわりと普通に笑うし、気を遣わない態度も憎めなくて、いつの間にか好きになっていた。
すごくイケメンというわけではなかったのに、同じような理由で惹かれる女子は多かったように思う。彼女たちより先に告白してしまおうか……なんて気楽に考えていた矢先だった。転機が訪れたのは。
文化祭の最中、教室に荷物を取りに行ったとき、磯ヶ谷くんを含めた男子が数人で話していた。なんとなく入るのをためらって戸口に立っていると、『八影さんって無愛想だけど顔はかわいいよな』、『付き合いてぇ』などという話が聞こえてくるではないか。
この頃の私は、そこまで愛想というものを気にしていなくて、作り笑いをすることもなかった。今よりは自分に素直に生きていたと思う。
ほかの男子はどうでもいいけれど、磯ヶ谷くんが私に対してどう思っているかは気になる。それを知りたくてドキドキしながら聞き耳を立ててしまったことを、すぐに後悔することになる。