腹黒王子の愛は、激甘でした。

37話 テスト返却

あれからテストが始まり、あっという間に数日後。

答案用紙が返却されるたびに、私は自分の目を疑っていた。

(え……うそ……)

英語も、数学も、苦手だった科目まで。

今まで見たことない点数が並んでいる。

(これって……もしかして……)

胸がじんわりと熱くなる。

思い浮かぶのは、あの放課後。

生徒会室で一緒に問題を解いてくれた時間。

分かるまで根気強く教えてくれた2人の姿。

(……ちゃんと、結果出せた)

その瞬間、どうしても伝えたくなった。

放課後。

私は足早に生徒会室へ向かう。

ドアの前で一度立ち止まって、深呼吸。

(よし……!)

コンコン、とノックをして扉を開ける。

「失礼します!」

中にいたのは、やっぱりその2人だった。

「優?」

「お、来た」

同時に視線が向く。

それだけで、少しだけ心臓が跳ねる。

(まだちょっと緊張するかも……)

でも、今日はちゃんと伝えたい。

私は一歩前に出て、ぎゅっと手を握った。

「テスト……返ってきました!」

「どうだった?」

颯汰先輩が優しく聞いてくれる。

廉先輩も、興味ありげにこっちを見ている。

「……すごく、良かったです!」

そう言って、私は答案用紙を見せた。

一瞬の沈黙。

そして――

「え、すごくない?」

廉先輩が素直に驚いた声を出す。

「うん、すごいね」

颯汰先輩も、ふっと柔らかく笑った。

「ちゃんと成果出てる」

その言葉に、胸がじんわりと温かくなる。

「2人のおかげです!」

思わず声が少し大きくなる。

「本当に、ありがとうございました!」

ぺこりと頭を下げる。

すると、

「いやいや、優が頑張ったからだよ」

「そうそう。俺らちょっと手伝っただけ」

2人とも当たり前みたいにそう言う。

でも、私は首を横に振った。

「そんなことないです!」

まっすぐ2人を見る。

「2人が教えてくれなかったら、絶対こんな点数取れなかったです」

言葉にしながら、改めて実感する。

(本当に、感謝してる)

「だから……!」

少しだけ緊張しながら、続ける。

「もしよければ……お礼、させてほしいです!」

その言葉に、2人が少しだけ目を丸くした。

「お礼?」

「はい!」

私はこくんと頷く。

「何でもいいので……!」

そう言った瞬間、

「じゃあさ」

先に口を開いたのは、颯汰先輩だった。

「今度の休み、一緒に出かけない?」

「……え?」

思わず、間の抜けた声が出る。

「せっかくだし、どこか行こう」

さらっと言う颯汰先輩。

でも、その目はどこか少しだけ真剣で。

(……お出かけ?2人で?)

一気に顔が熱くなる。

「え、あの、それって……」

言葉がうまく出てこない。

そんな私を見て、颯汰先輩は少しだけ笑った。

「嫌?」

「い、嫌じゃないです!!」

即答してしまう。

そのあとでハッとして、さらに顔が熱くなる。

横から、

「ははっ、即答じゃん」

廉先輩の楽しそうな声が聞こえた。

「う、うるさいです……!」

思わずそっちを睨むと、廉先輩は肩をすくめる。

でもその表情は、どこか優しくて。

(……?)

一瞬だけ違和感を覚えるけど、

それよりも今は――

「じゃあ決まりだね」

颯汰先輩の声。

「空いてる日、あとで教えて」

そう言って、優しく微笑む。

その笑顔に、胸がドクンと鳴る。

(どうしよう……)

嬉しい。

でも、それ以上に。

(めちゃくちゃ緊張する……!)

「……はい」

小さく頷くのが精一杯だった。

そんな私を見て、

「楽しみだね」

と颯汰先輩が言う。

その言葉に、

また心臓がうるさくなる。

――その少し後ろで。

廉先輩が、何も言わずに静かに笑っていたことに、

私はまだ気づいていなかった。
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