腹黒王子の愛は、激甘でした。
45話 文化祭準備
あのランチのあと。
颯汰先輩とは、表面上は“いつも通り”に戻った。
ちゃんと目も見て話せるし、会話だって普通にできる。
笑うことも、前みたいにできている。
――でも。
(“いつも通り”って、こんな感じだったっけ…?)
自分の席に座りながら、ぼんやりとそんなことを考える。
『颯汰先輩といるとき、うまく話せなくなるだけで…』
あのとき、思い切って伝えた言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
(あんなこと言っちゃってよかったのかな…)
(絶対、変に思われたよね…)
じわじわと顔に熱が集まってきて、思わず机に伏せそうになる。
(でも…嘘じゃないし…)
むしろ、あれでも全然足りないくらいで。
(……好き、なんて)
(言えるわけないよ…)
胸の奥がじんわりと苦しくなる。
その感情から逃げるみたいに、私は小さく息を吐いた。
「はーい、ホームルーム始めるぞー」
先生の声で、教室の空気が切り替わる。
「もうすぐ文化祭があるのは分かってるな?」
その一言で、教室が一気にざわついた。
「ということでまずはクラスの文化祭実行委員を決めたいと思います」
(あ、そういえば…)
文化祭。
年に一度の大きな行事。
準備も当日も大変そうだけど、きっと楽しいイベント。
「やりたい人いるかー?」
「やだー」「忙しそう〜」
あちこちからそんな声が上がる。
私はなんとなく黒板を見つめながら、
(楽しそうではあるけど…責任重そうだなぁ…)
なんて考えていた。
「じゃあ推薦でもいいぞー」
その言葉の直後。
「はい!」
元気よく手を挙げたのは――明日華だった。
「咲良優さんを推薦しまーす!」
「……え?」
一瞬、思考が止まる。
「ちょ、明日華!?」
「優なら絶対ちゃんとやってくれるもん!」
にこにこと、まったく悪びれない笑顔。
(いやいやいやいや無理無理!!)
心の中で全力でツッコミを入れる。
「他に推薦ある人ー?」
先生の言葉に、
「賛成ー!」「いいと思う!」
クラスのあちこちから声が上がる。
(ちょっと待って!?なんでそんな流れになるの!?)
気づいたときには、もう逃げ場なんてどこにもなくて。
「じゃあ咲良で決まりでいいな?」
「……は、はい…!」
半ば反射的に返事をしてしまった。
その瞬間、教室に拍手が広がる。
(うそでしょ…)
(私、文化祭実行委員になっちゃった…!?)
呆然としていると、
隣から明日華が小声で話しかけてきた。
「優なら絶対できるって思ったから!」
「も〜…急すぎるってば…」
文句を言いながらも、
その言葉が少し嬉しくて、思わず笑ってしまう。
* * *
ホームルームが終わり、廊下に出たときだった。
「優」
呼び止められて振り返る。
そこにいたのは――颯汰先輩だった。
「文化祭実行委員、やることになったんでしょ?」
「えっ、もう知ってるんですか!?」
「さっき先生から聞いた」
(情報早すぎる…!)
さすが生徒会長、というべきか。
「大変になると思うけど、大丈夫?」
少しだけ距離を詰めて、覗き込むように聞いてくる。
(ち、近い…!)
一瞬で心臓が跳ね上がる。
「だ、大丈夫です!頑張ります!」
なんとか平静を装って答えると、
颯汰先輩はふっと安心したように笑った。
「そっか」
そのあと、少しだけ優しい声で続ける。
「困ったら、ちゃんと頼ってね」
その一言が、
胸の奥にじんわりと染み込んでくる。
(……ほんと、ずるい)
こんな風に言われたら、
また頼りたくなっちゃうに決まってる。
「はい…!」
私は小さく頷いた。
――その少し後ろで。
「へえ、実行委員か」
壁にもたれながらその様子を見ていた廉先輩が、
ふっと目を細める。
「また面白くなりそうだね」
小さく呟いたその声は、
誰にも届くことなく、廊下のざわめきに紛れていった。
こうして。
私の文化祭は、
思っていたよりずっと騒がしくて、
そして――特別なものになっていく予感がした。
颯汰先輩とは、表面上は“いつも通り”に戻った。
ちゃんと目も見て話せるし、会話だって普通にできる。
笑うことも、前みたいにできている。
――でも。
(“いつも通り”って、こんな感じだったっけ…?)
自分の席に座りながら、ぼんやりとそんなことを考える。
『颯汰先輩といるとき、うまく話せなくなるだけで…』
あのとき、思い切って伝えた言葉が、何度も頭の中で繰り返される。
(あんなこと言っちゃってよかったのかな…)
(絶対、変に思われたよね…)
じわじわと顔に熱が集まってきて、思わず机に伏せそうになる。
(でも…嘘じゃないし…)
むしろ、あれでも全然足りないくらいで。
(……好き、なんて)
(言えるわけないよ…)
胸の奥がじんわりと苦しくなる。
その感情から逃げるみたいに、私は小さく息を吐いた。
「はーい、ホームルーム始めるぞー」
先生の声で、教室の空気が切り替わる。
「もうすぐ文化祭があるのは分かってるな?」
その一言で、教室が一気にざわついた。
「ということでまずはクラスの文化祭実行委員を決めたいと思います」
(あ、そういえば…)
文化祭。
年に一度の大きな行事。
準備も当日も大変そうだけど、きっと楽しいイベント。
「やりたい人いるかー?」
「やだー」「忙しそう〜」
あちこちからそんな声が上がる。
私はなんとなく黒板を見つめながら、
(楽しそうではあるけど…責任重そうだなぁ…)
なんて考えていた。
「じゃあ推薦でもいいぞー」
その言葉の直後。
「はい!」
元気よく手を挙げたのは――明日華だった。
「咲良優さんを推薦しまーす!」
「……え?」
一瞬、思考が止まる。
「ちょ、明日華!?」
「優なら絶対ちゃんとやってくれるもん!」
にこにこと、まったく悪びれない笑顔。
(いやいやいやいや無理無理!!)
心の中で全力でツッコミを入れる。
「他に推薦ある人ー?」
先生の言葉に、
「賛成ー!」「いいと思う!」
クラスのあちこちから声が上がる。
(ちょっと待って!?なんでそんな流れになるの!?)
気づいたときには、もう逃げ場なんてどこにもなくて。
「じゃあ咲良で決まりでいいな?」
「……は、はい…!」
半ば反射的に返事をしてしまった。
その瞬間、教室に拍手が広がる。
(うそでしょ…)
(私、文化祭実行委員になっちゃった…!?)
呆然としていると、
隣から明日華が小声で話しかけてきた。
「優なら絶対できるって思ったから!」
「も〜…急すぎるってば…」
文句を言いながらも、
その言葉が少し嬉しくて、思わず笑ってしまう。
* * *
ホームルームが終わり、廊下に出たときだった。
「優」
呼び止められて振り返る。
そこにいたのは――颯汰先輩だった。
「文化祭実行委員、やることになったんでしょ?」
「えっ、もう知ってるんですか!?」
「さっき先生から聞いた」
(情報早すぎる…!)
さすが生徒会長、というべきか。
「大変になると思うけど、大丈夫?」
少しだけ距離を詰めて、覗き込むように聞いてくる。
(ち、近い…!)
一瞬で心臓が跳ね上がる。
「だ、大丈夫です!頑張ります!」
なんとか平静を装って答えると、
颯汰先輩はふっと安心したように笑った。
「そっか」
そのあと、少しだけ優しい声で続ける。
「困ったら、ちゃんと頼ってね」
その一言が、
胸の奥にじんわりと染み込んでくる。
(……ほんと、ずるい)
こんな風に言われたら、
また頼りたくなっちゃうに決まってる。
「はい…!」
私は小さく頷いた。
――その少し後ろで。
「へえ、実行委員か」
壁にもたれながらその様子を見ていた廉先輩が、
ふっと目を細める。
「また面白くなりそうだね」
小さく呟いたその声は、
誰にも届くことなく、廊下のざわめきに紛れていった。
こうして。
私の文化祭は、
思っていたよりずっと騒がしくて、
そして――特別なものになっていく予感がした。