電話越しで恋をした副社長から、突然プロポーズされました
メールを副社長に送ると電話が鳴った。
「お電話ありがとうございます。北海道支社、湯元でございます」
『お疲れ様です。丸谷です』
「お疲れ様です!」
『とてもわかりやすくて面白いですね。仕事が早くて丁寧なので感心していますよ』
「ありがとうございます!」
『湯元さんのおすすめのデートスポット、ぜひ連れて行ってほしいですね』
「北海道にいらっしゃるならぜひ!」
明るく答えた後で、私の頬が熱くなった。
まるでデートに誘ってしまったみたいじゃない?
 ……相手は副社長なのに、失礼なことを言ってしまった。
「もちろん仕事で……」
『あはは、そんなことはわかっています』
笑われて羞恥心に襲われる。
私が恋愛初心者だとバレバレだろう。
いや電話だけでそんなことわかるはずないかな? 副社長は大人の男性ですべてを見抜いているような気もするけれど……
少しだけ間があって――
『湯元さんって、かわいいですね。早く会いたいです。会って色んな話をしてみたいです』
優しい声が聞こえてきて、耳が溶けてしまうのではないかと思った。
私も会って話したいけれど、この気持ちは何なのだろう……。
電話のやり取りだけで、こんなにも胸がときめくなんておかしいのかもしれない。
どんな返事をするのは正解かわからなくて黙り込んでしまった。
『こんなこと言ったらセクハラになってしまいますね。お詫びします』
「あ、いえ。でも……副社長、私の顔……見たことありませんよね?」
『知っていますよ』
あ、そっか。
役職者は、社内共有ファイルにパスワードを入れると履歴書や個人情報を確認できる。
契約社員の私には権限が与えられていない。
「私は副社長の顔がわかりません。ちょっと不公平ですね」
どんな人なのか、顔を見たい。
声はすごくイケメン。
でも、副社長の人柄が素晴らしいと思っているから、外見なんてどうでもいい。
『……僕のこと、覚えていませんか?』
「たしか……入社式のときは、副社長は海外出張でしたのでお会いしていないかと思います」
『さすがに声だけでは……覚えていませんよね。いや、いいです。大丈夫です。お会いできるのを楽しみにしています』
そう言って電話が切れた。
今の話しぶりだとどこかでお会いした感じだった。
どう考えても副社長に会った記憶は思い出せない。
「どこかで会ったかな……」
実際に対面すると思い出せるかもしれない。
退勤時間になり、所長が戻ってきた。
「お疲れ様でした」
挨拶を済ませると更衣室に向かい、鞄を持って靴を履き替える。
いよいよ、素敵な声の副社長にお会いできる!
思わず副社長のことばかり考えてしまっている。
実際の私に会ったらどんな気持ちになるのかな? 写真と実物は違うと思われてしまうかも。
鏡を確認しながら黒髪のセミロングを手ぐしで梳かす。
大きい二重に小さめの口でかなり童顔だ。
声も高めだし……。
大人っぽい知的な女性に憧れる。
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