【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
そして淡々と言葉を紡いでいく。
「換気や掃除をしてくれると助かる」
「あの、それは家事代行に頼めばいいことでは……?」
「……最初は、そうしていたんだ。だが、目がくらんだのか窃盗する人が増えてね……しかも、金品ではなく、俺の服」
うわぁ、と思わず顔に出してしまった。
一希くらい格好いい人なら、一目惚れされて執着されたこともあるのかもしれない。
(服、にも種類があるしね。これで下着が盗まれたなら……)
自分の身に置き換えてゾッとした。
「あ、もちろんその人たちは接触禁止にしてもらったよ」
「たち……」
いったいどのくらいの人数が、一希の私物を盗んだのだろうか。そして、そのたびに彼はその処置をしていたのだろうか。
「大変でしたね」
「うん、まぁ。そういうのが続いて、知らない人をこの家に任せたくないなって思ってね。鍵を変えるのも面倒だし」
「えっ、もしかして合鍵を作られたんですか?」
重々しく首を縦に動かすのを見て、美雨は呆然としてしまった。
「……でも、いいのですか? 私だって、初対面とあまり大差ないような……」
中学のときに一度だけ話しただけの関係だ。
バーで話したり、体温を分かち合ったりしたが、それは一夜の夢だと思ってやったこと。
「ああ、うん。俺が支払うたびに胃が痛そうな顔する女性が、窃盗するとは思わないし」
「うっ。だ、だって、先輩の支払い額、かなりですよ!」
バーで飲んだカクテルや軽いつまみ、ホテルのスイートルーム代、さらにブランドの化粧品を多数の服や靴まで。
こんなにたくさん貢がれるほどの人間ではないことを、美雨自身が一番よく知っている。
「それに……」
「それに……?」
一希は椅子から立ち上がり、美雨に手を伸ばして顎をクイッと軽く持ち上げた。
「俺は、きみが地味だなんて思わない」
「ッ」
短く息を呑んだ。