【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
「……考えても仕方ないことだけど」
「なにが?」
「せっ、先輩! お、おはようございます」
「おはよう。いい匂いだね」
ひとりだと思ってつぶやいた言葉を拾われて、美雨はビクッと肩を跳ねさせる。
振り返ると一希が立っていて、彼を見上げて朝の挨拶をすると、一希はくんくんと匂いを嗅いだ。
「今日もおいしそうだ」
「ありがとうございます……」
「……美雨、俺たちの関係って、どんなものかな?」
「え? 夫婦、ですよね」
美雨が迷うことなく答えると、一希は安堵したように目を細め、それから彼女の唇を人差し指でチョンと突いた。
「敬語や『先輩』呼びはやめてほしいな。俺には『一希』という名前があるんだし」
ニコニコと自分を指す一希。
「中学の先輩だったって気づいてから、ずっと『先輩』呼びだろう?」
「……えっと、じゃあ……一希さん」
染谷さん、とは呼べない。美雨も『染谷』だからだ。
一希、と口にする声には、甘さが含まれていた。名前を呼ぶだけなのになぜこんなにも心臓が高鳴るのか――その理由を、美雨は知っている。
「あのっ、火を使うので……」
「手伝う?」
「いいえ、待っていてください」
「わかった、ありがとう」
ちゅ、と美雨の額に唇を落として、キッチンから去っていく。
リビングのソファに座り、スマホを持ち操作している姿は思わず見惚れてしまうほど格好よかった。