【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
耳元でそうささやかれて、「愛奈!」と咎めるようなキツい声が出た。愛奈はくるりと反転して、一希の近くにいき、その腕に胸を押し当てるように抱きついた。
「助けて、おにいさん! お姉ちゃんが怖いの!」
うるうると涙で瞳を濡らし、震える声で助けを求める愛奈に対し、一希は呆れたようなまなざしを注ぐ。
「美雨は、きみのほうが怖いと思うよ」
「……え?」
「一希さん……」
「きみたち姉妹のことは、美雨やおじいさんから聞いている。その上で観察してきたけれど、きみは美雨のことを嫌い……いや、憎んでいるとも言えるだろう」
一希は淡々とした口調で言葉を紡ぐ。その内容に美雨は大きく目を見開き、愛奈は怪訝そうに顔を歪めた。
「常識のない人だとは思っていたけれど、本当にそうだった」
愛奈を押し退け、一希は立ち上がって鞄から茶封筒を取り出すと美雨に渡す。
美雨は一度うかがうように一希を見上げたが、すぐに茶封筒に視線を落とし、中身を取り出した。
「これ、は――」
「美雨がずっとこのままなのはつらいだろうと思ってね。悪いけれど、調べさせてもらった」
興信所の結果だった。愛奈がどれだけ悪どいことをしていたかの報告だ。
姉の美雨の恋人以外にも、略奪を繰り返しているようで、バレてしまった何人からか慰謝料の支払いを求められている。
「ちょっと! なに人のことを嗅ぎまわっているのよ!」
「今日、うちに来たのは金を借りに来たのだろう?」
「……ッ!」
図星だったのか、愛奈は言葉を詰まらせた。