【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
「すみません、ご迷惑をおかけして……!」
バッと勢いよく頭を下げると、義母は「いいのよ」と柔らかく答える。
「一希から美雨さんの事情を教えてもらっていたから、いつか接触してくるんじゃないかと思っていたの」
声から温度は感じられず、美雨はおそるおそる顔を上げて義母の顔を真正面から見つめた。
その瞳には美雨に対する慈愛が浮かんでいて、美雨は言葉を呑む。
義母と話したことはあまりない。こうしてふたりきりで話すのも初めてだ。
「もちろん、お断りしたけれど、よかったかしら?」
こくこくと何度もうなずいた。きちんと断ってくれて胸をなでおろす美雨を眺め、義母は再びお茶を飲んだ。
「愛奈のことは青泉家が責任を取るべきですから」
今までずっと、両親に甘えていた愛奈。自分の行いを反省し、きちんと責任を果たす――そんな日が来るかは謎だが、染谷家に迷惑をかけるわけにはいかない。
「そうね。私の目から見ても、あの家は少し――特殊だもの」
「……そう、ですね」
「あの家で暮らして、よく自分を守ったわ」
義母はすくっと立ち上がり、美雨に近づくとガラス細工に触れるように柔らかく頬に触れた。
「お義母さん……」
「一希と出逢ってくれてありがとう、美雨さん」
――青泉家が迷惑をかけているのに、どうしてこんなに優しい言葉をかけてくれるのだろう? と美雨がじっと義母を見つめていると、彼女は頬から手を離し、口元で人差し指を立てる。
「実は私も、夫に助けてもらったのよ」
「――えっ?」
「父の会社が倒産の危機に陥ってね。それを助ける代わりに私を求められたの。何歳差だったかしら……二十か三十歳差くらいだったような気がするわ。これが、十九歳の頃の話よ」
美雨はぎょっとして目を剥いた。義母にそんな過去があるとは思わなかった。
いつも穏やかに微笑み、義父のことを心底愛していることが伝わる人だからだ。