【完結】美容系開業医とワンナイト後結婚したら、溺愛されました!
 カウンターでぼんやりとシェイクされるのを眺め、改めてすごいなぁとその手捌きに感心する。

「どうぞ」
「ありがとうございます」

 差し出されたダイキリを受け取り、こくりと一口飲む。

(さっぱりしてる……気持ちもさっぱりしそうな味)

 美雨はあまりカクテルに詳しくない。

 だが、このバーテンダーは、いつも彼女の気持ちを聞いてから、それに合ったカクテル言葉を伝え、美雨が『それでお願いします』と注文するスタイルになっていた。

「ほのかに甘くておいしいです」
「それはよかったです。どうぞ、ゆっくりしてくださいね」

 こくり、と首を縦に動かすと、バーテンダーは穏やかに微笑んでそれ以上なにも言わなかった。

 美雨がこのバーを気に入ったのは、このバーテンダーのなにも聞かない姿勢が気に入ったからだ。

 店内には穏やかなジャズが流れ、ほんのりと暗めの照明が辺りを照らしている。

 まだ午後六時半という早い時間帯だからか、客は美雨ひとりだ。

 平日ということもあるかもしれない。

 ゆっくりとダイキリを味わっていると、カランと来客を知らせる鐘が鳴る。

 入ってきたのは男性のようで、美雨のことを見るとその手にしているカクテルに視線を移した。

 バーテンダーから「お好きなところに」と言われた男性は、真っ直ぐに美雨のところへ足を進めた。

「隣に座っても?」
「ど、どうぞ」

 声をかけられて美雨の鼓動が跳ねた。

 だって、あまりにも格好いい人だったのだ。

 高い身長に、整った顔立ち。明るいブラウンの瞳はちょっと垂れ目だが、そのまなざしは優しく美雨を見据えている。

 柔らかい間接照明に照らされた髪型はショートカットで、色は艶のあるオリーブアッシュで、落ち着いた雰囲気だ。
< 8 / 91 >

この作品をシェア

pagetop