受付嬢なのに、清掃員から一途に溺愛されています ~タワマン最上階で猫と過ごす、秘密の恋~
 受付嬢って、華やかだと思われがちだ。

 きれいな制服を着て、
 笑顔で立っているだけで、
 いい仕事だね、なんて言われる。

 でも、実際に一番多い仕事は――

 「すみません、トイレはどこですか」

 これ。

 私は、笑顔のまま、
 ロビーの奥を指す。

 目の前には、
 大きなフロアマップ。

 トイレの場所は、
 ちゃんと、太字で書いてある。

 ……見えてるはずなんだけどな。

 そう思いながらも、
 声に出すことはない。

 特に年配の方ほど、よく聞いてくる。

 中には、顔色が悪くて、
 本当に切羽詰まっている人もいる。

 そういうときは、心の中で、
 ただ祈る。

 ――どうか、間に合って。

 受付嬢の仕事って、
 意外と、祈りが多い。

 それから、寒さ。

 受付カウンターは、
 一階ロビーのど真ん中。

 冬はもちろん、
 夏の冷房も、
 容赦がない。

  「受付って涼しそう」

 なんて言われるけれど、違う。

 涼しいんじゃなくて、
 冷える。

 女性にとっては、かなりきつい。

 だから、
 厚手のタイツは必須だ。

 私は、
 隣に立つ絵莉の足元を、
 ちらっと見る。

 今日も、しっかり対策済み。

  「寒くないですか」

 小声で聞くと、
 絵莉は、
 にこっと笑って言った。

  「寒いよ」

 即答だった。

 それでも、その笑顔は、
 受付用の完璧なもの。
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