受付嬢なのに、清掃員から一途に溺愛されています ~タワマン最上階で猫と過ごす、秘密の恋~
 社用車に向かい、後部座席に並んで座る。

 走り出してすぐ、西条は何も言わず、
 こちらを見ていた。

 「……顔が赤い」

 そう言って、彼は手を伸ばした。

 額に触れた瞬間、ひんやりとした感触に、
 自分の熱を自覚する。

 「熱、あるな」

  「大丈夫です」

 反射的に答える。

  「今日の打ち合わせ、
   私がいないと――」

 言い終わる前に、
 彼は携帯電話を手に取っていた。

 「申し訳ありません。
  本日の開始時間ですが――」

 淡々と、でも迷いのない声。
 電話を切ったあと、西条は私を見た。

 「君のせいじゃない」

  低く、落ち着いた声。

 「体調管理も、仕事のうちだ」

 車は、
 打ち合わせ先とは逆の方向へ進む。

 「……どこへ?」

 「俺の家だ」

 それだけで、説明はなかった。
 でも、その言葉には、揺るぎがなかった。

 タワーマンションの部屋は、
 昼間でも静かだった。

 ベッドに横になるよう促され、
 私は戸惑いながらも従う。

 毛布をかけられ、薬と水が置かれる。

 「今日は、ここで休め」

 「……すみません」

 そう言うと、彼は首を振った。

 「無理をさせたくないだけだ」

 その言葉に、
 胸の奥が、じんと熱くなる。
 猫のマルが鳴き、
 足元に近づいてきた。

 安心したのか、
 疲れが一気に押し寄せて、
 私はそのまま眠ってしまった。
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