八年執着されましたが、幸せです ~傷心のホテリエですが、イケメン御曹司と契約恋人になりました~
「ボランティアや寄付って、応援したい気持ちでお金を出すじゃないですか。クラウドファンディングも、応援する気持ちに加えて、少しばかりのお礼をもらう。今回の件もそれに似た感情なんです。私は無類の蕎麦好きで、休日になるとあちこち食べ歩いています。最初は都内の高級店を回っていましたが、それに飽き足らず立ち食い蕎麦や色んな店に足を運ぶようになりました。〝みつみね〟に出会ったのもその活動の一環で、自分の味覚とドンピシャの蕎麦に出会えて感動しました」
そこまで言い、副社長はにっこり笑う。
「実際〝みつみね〟にはファンが多かったでしょう? 皆さん、本当に美味しいと思うからこの店に通っていたのです。私は少し金を持ってるだけの、一ファン。大好きな店がなくなる事だけは避けたいので、なんとか金の力で解決しようとしている。……そんな感じです」
そのあと、彼は私に話したように〝みつみね〟の蕎麦の魅力を饒舌に話し、母や弟、叔父たちも副社長が本当にうちの店のファンなのだと理解した。
「……その上で、これは非常に言いづらいのですが、神楽坂グループの息子として、私はいま両親から結婚やお付き合いについてせっつかれています。ですが私は、今はまだ仕事に身を入れたいと思い、結婚については現実的なビジョンを描けずにいます。……そこで芳乃さんに協力していただき、恋人役を請け負っていただきたいと思っています。加えて、私が住んでいるマンションの同じフロアに住んでいただき、健康的な家庭料理を作っていただけたらと思っています。私は〝みつみね〟に出資しますが、芳乃さん自身にも何らかの形で少しお返しをしていただけたら、私としても個人的にとても助かります」
副社長は真剣な表情で続ける。
「大切な娘さんに恋人〝役〟、家政婦の真似事など求めて申し訳ございません。ですが相応に給料を支払いますし、マンションの家賃や光熱費などもこちらで持ちます。私は仕事で多忙を極めていまして、接待で外食が多い他にも、疲れてデリバリーや外食で済ませる事が多いです。理由があって家政婦さんには拒否感があり、そこで芳乃さんと出会い、お互い需要と供給が一致するかな……と思いました」
彼の説明を聞き、叔父が控えめに尋ねる。
「芳乃がつらい目に遭う事はないでしょうか? 神楽坂さんは大企業の御曹司ですし、立派な地位にいる成人男性が決められた事とはいえ、ご両親の反対に遭ったりなど……」
「問題ありません。両親には既に相談済みで、快諾をもらっています」
そこまで手を回していると思わず、私は瞠目する。
「今後、芳乃さんに恋人ができた場合は、お相手を勘違いさせてはいけませんので、その時に関係は解消したいと思います。ですがお店への援助の話を白紙に戻したりはしませんので、ご心配なく」
そう言われ、叔父は言う事をなくしたようだ。
私たちは「どうする……?」という感じで視線を交わし合い、そのあと母が決意して口を開いた。
「それでは、どうぞ宜しくお願いいたします。必ず、ご恩に報いられるよう、店を軌道に乗せていきますので。私自身、今まで主人の手伝いに甘んじていましたが、もっと経営や蕎麦の事について学ぶよう、努力いたします」
「期待しています。それでは、今後とも宜しくお願いいたします」
話は決まり、そのあと副社長は父の仏前に座ってお参りをする。
彼が目を閉じて手を合わせている姿を見て、とても不思議な気持ちになった。
雲の上の存在と思っていた人が、父が打つ蕎麦のファンだったという巡り合わせが、ピンチに陥った三峯家を救う事になるなんて……。
(あとはホテルの合否か……。受かったら副社長のためにも一生懸命働きたい)
副社長が秘書を伴って帰ったあと、私たちはささやかながら、問題が解決したお祝いにビールを飲んだ。
**
その後、内定通知がきて、私は一安心する。
店の買収に関しても、副社長の秘書が積極的に動いて、お弟子さんの店に掛け合ってくれたり、融資してくれていた銀行との間を取り持ってくれたりで頭が上がらない。
父が亡くなったのは六月の上旬で、私が面接を受けたのが六月の終わり頃。
七月初めに副社長が私たちの家に来て問題が解決し、二週目の週末には私は副社長が住む皇居添いのマンションに引っ越す事になった。
副社長に言ったように、私の荷物はスーツケースや大きめのリュックに収まる程度だ。
土曜日の午前中、副社長がまた実家まで車で来てくれた。
秘書さんが荷物を車のトランクに入れてくれ、私は副社長と共に優雅に後部座席に座って移動だ。
最後に母に挨拶したあと、車は滑らかに走り始めた。
そこまで言い、副社長はにっこり笑う。
「実際〝みつみね〟にはファンが多かったでしょう? 皆さん、本当に美味しいと思うからこの店に通っていたのです。私は少し金を持ってるだけの、一ファン。大好きな店がなくなる事だけは避けたいので、なんとか金の力で解決しようとしている。……そんな感じです」
そのあと、彼は私に話したように〝みつみね〟の蕎麦の魅力を饒舌に話し、母や弟、叔父たちも副社長が本当にうちの店のファンなのだと理解した。
「……その上で、これは非常に言いづらいのですが、神楽坂グループの息子として、私はいま両親から結婚やお付き合いについてせっつかれています。ですが私は、今はまだ仕事に身を入れたいと思い、結婚については現実的なビジョンを描けずにいます。……そこで芳乃さんに協力していただき、恋人役を請け負っていただきたいと思っています。加えて、私が住んでいるマンションの同じフロアに住んでいただき、健康的な家庭料理を作っていただけたらと思っています。私は〝みつみね〟に出資しますが、芳乃さん自身にも何らかの形で少しお返しをしていただけたら、私としても個人的にとても助かります」
副社長は真剣な表情で続ける。
「大切な娘さんに恋人〝役〟、家政婦の真似事など求めて申し訳ございません。ですが相応に給料を支払いますし、マンションの家賃や光熱費などもこちらで持ちます。私は仕事で多忙を極めていまして、接待で外食が多い他にも、疲れてデリバリーや外食で済ませる事が多いです。理由があって家政婦さんには拒否感があり、そこで芳乃さんと出会い、お互い需要と供給が一致するかな……と思いました」
彼の説明を聞き、叔父が控えめに尋ねる。
「芳乃がつらい目に遭う事はないでしょうか? 神楽坂さんは大企業の御曹司ですし、立派な地位にいる成人男性が決められた事とはいえ、ご両親の反対に遭ったりなど……」
「問題ありません。両親には既に相談済みで、快諾をもらっています」
そこまで手を回していると思わず、私は瞠目する。
「今後、芳乃さんに恋人ができた場合は、お相手を勘違いさせてはいけませんので、その時に関係は解消したいと思います。ですがお店への援助の話を白紙に戻したりはしませんので、ご心配なく」
そう言われ、叔父は言う事をなくしたようだ。
私たちは「どうする……?」という感じで視線を交わし合い、そのあと母が決意して口を開いた。
「それでは、どうぞ宜しくお願いいたします。必ず、ご恩に報いられるよう、店を軌道に乗せていきますので。私自身、今まで主人の手伝いに甘んじていましたが、もっと経営や蕎麦の事について学ぶよう、努力いたします」
「期待しています。それでは、今後とも宜しくお願いいたします」
話は決まり、そのあと副社長は父の仏前に座ってお参りをする。
彼が目を閉じて手を合わせている姿を見て、とても不思議な気持ちになった。
雲の上の存在と思っていた人が、父が打つ蕎麦のファンだったという巡り合わせが、ピンチに陥った三峯家を救う事になるなんて……。
(あとはホテルの合否か……。受かったら副社長のためにも一生懸命働きたい)
副社長が秘書を伴って帰ったあと、私たちはささやかながら、問題が解決したお祝いにビールを飲んだ。
**
その後、内定通知がきて、私は一安心する。
店の買収に関しても、副社長の秘書が積極的に動いて、お弟子さんの店に掛け合ってくれたり、融資してくれていた銀行との間を取り持ってくれたりで頭が上がらない。
父が亡くなったのは六月の上旬で、私が面接を受けたのが六月の終わり頃。
七月初めに副社長が私たちの家に来て問題が解決し、二週目の週末には私は副社長が住む皇居添いのマンションに引っ越す事になった。
副社長に言ったように、私の荷物はスーツケースや大きめのリュックに収まる程度だ。
土曜日の午前中、副社長がまた実家まで車で来てくれた。
秘書さんが荷物を車のトランクに入れてくれ、私は副社長と共に優雅に後部座席に座って移動だ。
最後に母に挨拶したあと、車は滑らかに走り始めた。