八年執着されましたが、幸せです ~傷心のホテリエですが、イケメン御曹司と契約恋人になりました~
「彼女は三峯芳乃さん。今日から同棲するので、覚えておいてください」

「畏まりました」

 同棲すると他人に言われ、なんだかとても恥ずかしくなる。

「春になると中庭に桜が咲いて綺麗だし、うちはペントハウスだから皇居の桜も綺麗に視えるよ」

「は、……はぁ……」

 皇居ビューのマンションというだけでも凄いのに、さらにペントハウスと聞いて、期待半分不安半分だ。

 素晴らしいお宅を拝見できる楽しみがあるいっぽうで、本当に自分がそんな所に住んでいいのか申し訳なくなる思いがある。

 エレベーターに乗って十四階で下りると、彼が言っていたようにフロアには二戸家があるようだった。

 暁人さんは左手にある玄関に向かい、鍵を開けると「どうぞ」と私をいざなう。

「この十四階は楕円を半分にした感じで住居スペースがあって、ご存知の通りもう一つは空けてある。十五階のペントハウスはその楕円をまるまる使ったフロアなんだ。順番に紹介していくよ」

 彼はとんでもない事をサラッと言い、私に家の中を案内してくれた。

 色んな収納がある玄関のすぐ左手にはお手洗いがあり、その奥には六畳ほどの部屋がある。

 廊下を挟んで向かいには洗面所とお風呂があり、そのスペースを回り込んだ場所に、十三畳ほどのベッドルームとウォークインクローゼットがあり、そこを客室にしているようだ。

 玄関から右手に行くと二十五畳ほどのリビングダイニングもあり、広々としたカウンターキッチンもある。

 どの部屋にも大きな窓があり、部屋の中は明るい。

「こっち、階段があるよ」

 暁人さんについてリビングダイニングの隅にあるドアから出ると、目の前には階段があり、物置らしきスペースもあった。

 キッチン横にある引き戸からも通じているので、パントリーにもなっている。

 バルコニー横にある階段を上がって行くと、すぐ右手には収納、その奥にはもう一つキッチンがある。

 暁人さんが目の前にある引き戸を開くと、先ほどよりもっと広い、四十畳近くのリビングダイニングが広がった。

「わぁ……!」

 その向こうには広々としたルーフバルコニーもあり、多分こちら側一帯のワンフロア下が空き部屋なんだろう。

「たまに人が集まる時は、さっきのパーティーキッチンにシェフを呼んで、このリビングダイニングで食べる感じかな」

 言っている事がセレブすぎて、もう頭がついていかない。

 暁人さんは元来た道を戻り、階段の反対側に向かう。

「ここはマスターベッドルーム。いつもはここで寝てる」

 寝室なのに二十畳近くあるそこを見た私は、「ここで暮らせそう……」と呟いてしまった。

「この寝室で寝たいなら大歓迎だけど」

「いっ、いえっ! 違いますっ!」

 変な勘違いをさせてしまったと悟り、私は必死に否定する。

 暁人さんはそんな私を見てクスクス笑い、お店でも開けるんじゃないかという、物凄く広いウォークインクローゼットをチラッと見せてくれ、その奥にある洗面所、シャワーボックスにジェットバスを見せてくれる。

「あと、ここはお気に入りなんだ」

 暁人さんはバスルームから外に出られる引き戸を開けると、屋外の壇上にあるジェットバスを示して笑った。

(……せ、世界が違いすぎる……!)

「……左様でございますか……」

 私は壁に手をつき、そう言うので精一杯だった。





 メゾネットの下階に戻ったあと、暁人さんは私の荷物を十三畳ある客室に運ぶ。

「あっ、あの、もう一部屋のほうでも……」

「あっちは書斎だから、ここを使って。基本的に上は寝る時と風呂だけに使ってる感じかな。リビングダイニングも下のほうが落ち着くし。上下階ともバス、洗面、トイレがあるから、普段の生活は上下で分けよう」

「お気遣いありがとうございます。ですが、私が言うのも変ですが、下階でくつろいでいる時や、緊急時は下のお手洗いを使ってください。暁人さんは家主ですし。わざわざこの広いメゾネットの中、移動するのは大変ですから」

「君こそ、お気遣いありがとう」

 暁人さんは微笑んだあと言う。

「君には料理を作ってもらう訳だけど、普段使っている調味料とか出汁とか、調理器具とか、足りない物があったらリストアップしてほしい。君にとって一番いい状態で、美味しい料理を作ってほしいから」

「分かりました」

 そのあと、彼はチラッと腕時計を見る。
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