二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
『あいつに抱かれているなら、俺ともできるだろ? 可愛い日本の女の子』
そして春子の耳元をざわつかせた声も、ウィリアムのそれとはまったく違う響きを持った英語だった……。
そこから先、正直に言うと、春子の記憶は曖昧である。
思い出すのが辛すぎて、頭が、心が、覚えておくことを拒否しているかのようだった。ただ、要約すると次のようになる──。
春子は、ウィリアムの上官にあたる男に乱暴されそうになった。
ウィリアムはそこに駆けつけ、春子を救った。
あのときのウィリアムは春子の知っている穏やかなウィリアムではなかった。仔を護る獅子よりも獰猛に春子を護った……その事実を、嬉しくも思うし、悲しくも思う。
ウィリアムに救われたあと、ふたりが交わした抱擁を、春子は忘れない。
『結婚しよう。君を連れていく』
そして、涙ながらに受け取った婚約指輪も。
幸せになれるのかもしれないと夢を見たのに、次の朝に春子が受けた報は、ウィリアムが逮捕されて軍法会議にかけられることになった……というものだった。
あとからわかったことには、春子を乱暴しようとした男は、本国ではそれなりに名の通った政治家の息子だったのだ。
事件を揉み消すため、ウィリアムを悪者に仕立てることなど難しくなかったのだろう。春子を救う際、ウィリアムがこの男に怪我を負わせていたことも不利になった。
ウィリアムは、春子に別れの挨拶をする時間さえ与えられず、本国に強制送還となった。
つわりがはじまり、春子が妊娠に気づいたのはそれからひと月後だった。
そしてこの物語がはじまる。