二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「あなたはそれを今も守っているんですね」
「ああ。そして今晩、その調理をしてくれたのは君だ。ありがとう」
「いえ……光栄です」
 なんだかくすぐったくて、乃亜ははにかみ笑いをした。そうしないと泣いてしまいそうだったから。
「とにかく──」
 ダグラスは続けた。

「ウィリアムはすぐ俺の父親代わりになってくれた。俺もウィリアムを慕った。本物の父親がすぐそばにいたのに可笑しな話だが、親子や家族なんていうのは、血の繋がりだけじゃない。わかるだろう」
「それは……わかります」

 ……と、言ってしまってから、口をつぐんだ。
 乃亜にとっての「血の繋がらない」曽祖父はウィリアムにとっての恋敵である。あの時代は仕方なかったとはいえ、ダグラスや……ましてやウィリアムにとって、聞いて気持ちのいい話ではないだろう。
 だから黙っていた。

「俺が九歳のとき、俺の父親は俺を牧場に置いたまま行方不明になった……そして数カ月後に隣の州で死体になって見つかった。あとでわかったことによると、マフィアとの抗争に巻き込まれていたとのことだった……。ドラッグではないよ。痴情のもつれだとか、そんな話を聞いた」
「そんな……」
「ろくな父親じゃなかったが……最後にひとつだけいいことをしてくれた。ウィリアムのところに俺を残したことだ。ウィリアムはすぐに俺を養子にする手続きをしてくれた。すでに結構な高齢だったから、健康診断まで散々させられて……なかなか大変だったよ。でも最終的には養子縁組が成立して、俺は正式に親父の……ウィリアムの息子になった」

 ダグラスはもう一度足元の小石を拾って、さっきと同じように湖に向かって投げた。
 今度は二度ほど水面を跳ねただけで落ちてしまう。
 乃亜は彼の真似はしなかった。
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