二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ダグラスは結局ここにいる。この牧場でウィリアムがダグラスのためにはじめたという夕食を続けて、馬に乗ってコテージを経営して、地元の人々も彼に敬意を持っている。
でも乃亜は、軍服姿のダグラスの写真を見てしまっている。
あの写真で彼はまだ若かった。
「それから……この牧場から逃げたくて、軍隊に入った。通常で四年の任期がある。テキサスとコロラドの牧場しか知らない十七歳が、世界を見たくて、家から逃げたくて選んだ道だ」
乃亜は息を飲んだ。
現代の日本で生まれ育った乃亜にとっては未知の世界だ。そうなんですか、と相槌を打つのも違う。どうしてですか、と疑問を投げる権利があるとも思えない。
ただ、ウィリアムに反抗した結果にも関わらず、結局ダグラスは彼とまったく同じ道を辿ったのだ。その運命の皮肉を思うと肌が粟立った。
そしてウィリアムは従軍先で春子に出会った。
じゃあ、ダグラスは……?
彼が「誰も愛さない」理由と、なにか関係があるのだろうか……?
どこか遠い異国で誰かを深く愛して、でもその愛は実らなくて、生涯独身を誓っている……とか。
「四年間」
乃亜は小さくささやいた。
「ああ、任務や職務にもよるが、基本的に通常の兵士は四年ずつの任期更新がある。俺は最初の四年間を終えてここに帰ってきた。親父は──」
ダグラスはここで喉を詰まらせた。
いつもは痛いくらい真っ直ぐ乃亜を見つめてくる灰色の瞳は、所在なさげにどこか遠くを彷徨っている。
「あの年齢の親父を置いていくべきじゃなかった」
「それは……。でも……」
「大抵のことはホセが代わってやってくれていた。他の従業員だっていた。八十代の男としてウィリアムは信じられないくらい健康だった。国に奉仕できたことは誇りに思っている。それでも、俺はしてはいけないことをした。これだけ恩がある人間に背を向けたんだ。彼が、最も俺を必要としていたときに」