二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ダグラスの声は震えている。
乃亜の肩にはダグラスのシャツが掛かっていて、彼は乃亜のために脱いだせいで半袖の素肌だ。
筋肉の筋や血管が浮き出ている男性らしい腕に、乃亜はそっと指先で触れた。
沢山の責任を負っている腕。
「あなたにだって自由はあります。きっとウィリアムさんにも覚悟はありました……。おばあちゃんを愛してくれたひとなら、きっと」
乃亜に触れられた瞬間、ダグラスはわずかにびくりと身体を固くした。
でも、その手を振りほどくことはせず、そっと視線を乃亜の指先に落とす。そしてふっと淡く微笑んだ。
「自由なんて概念は過大評価されているんだよ」
「そうかもしれません。でも、まったくないわけじゃないわ」
「……なるほど」
誰もが夢を抱えて、愛を求めて、もがく。
叶う願いなんて百にひとつしかないのかもしれない。でも、そのひとつのために。
しばらくふたりは無言で、静寂が続いた。
すでに子供が寝てしまったのかもしれない。コテージも静かになっていた。
今夜はもう、これ以上は語ってくれないのだと理解して、乃亜はダグラスの腕から手を離した。するとダグラスは唐突な感じで言った。
「どうしても乗馬を習いたいなら──わざわざネイトのところに行く必要はないよ。俺が教えるから」
「ほ、本当ですか?」
「ああ」
叶わなかったウィリアムと春子の愛の果てにあるものはなんだろう。
そうだ──乃亜とダグラスだ。
ふたりは今、ウィリアムが春子に約束したこのコロラドの果てに立っている。まだ見ぬ未来に震えながら。
遠くではすでにフクロウが静かになっていた。