二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

「やったぁ! ありがとう!」
 ここはアメリカだ。
 ハグくらいは許されるだろう。

 そう思って乃亜はダグラスに向かって大きく両手を広げた。おそらくダグラスはぎこちなく抱き返してくれる程度だろうと思ったのに、彼がしたのは乃亜の脇を掴んで高く抱き上げることだった。
 そしてクルクルと乃亜を回転させる。

「ダグラス!」
 信じられない!
 あのダグラスが……。数日前まで乃亜を訝しがって倦厭していたダグラス・マクブライトが、蕩けるような笑顔で乃亜を抱き上げて笑っている!

 ダグラスは背が高かったから、乃亜のつま先はかなり高くまで上がった。
 そして、その腕の力強さといったら……。

 バレエの演技で、こうして男性ダンサーに持ち上げられたことはあった。
 相手に全体重とすべてを預けるのだから、お互いに信頼の必要な行為だ。そして男性側のそれが、どれだけ難しくて責任が重いのかも、乃亜はよくわかっている。
 でも、ダグラスの腕にはすべてを安心して任せられる誠意があった。
 誠実さが。
 言葉で説明できる種類のものではない、本能からすべてを任せられる……むしろ任せたい、そんな強さが。

「礼を言うのは俺の方だよ」
 ダグラスの息はまったく上がっていない。
 まるで元バレリーナの料理人をクルクル回すのが日々の日課だと言わんばかりの冷静さで、乃亜の瞳を見つめている。

「報酬を……と言いたいところだが、君にこの国での労働許可はないだろうから、代わりになにか奢るよ」

 すぐにストンと床に下ろされるかと思ったのに、ダグラスはまだ乃亜を抱き上げたままだった。なんだか、まるでこの体勢を気に入ってしまったみたいに、乃亜を抱いて離さない。
 おかげで顔が近い──近すぎる。
< 142 / 287 >

この作品をシェア

pagetop