二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 ただ、この恋にあまり希望は見えないし、見えないままで……いいのかもしれないと思っている。
 自分は誰も愛さない、愛してはいけないと言ったのはダグラス本人だ。
 理由はわからない。
 でも、ネイトでさえダグラスのその決心を保証(?)したくらいだし、それでなくても立場の悪い乃亜では、そもそも勝負の土俵にさえ入れてもらえないはずだ。

 別に勝ち負けではないけれど。
 でも、負けというのは確実にあるのだ。

 乃亜はすでにその敗北を喫したばかりで、もう一度同じ目に合うのは耐えられそうになかった。
 だから憧れのままでいい……。
 好きな俳優やお気に入りのキャラクターに熱を上げるのと同じ。言ってみれば推し。そうだ、ダグラスは乃亜の推しなんだ。それでいい。
 それがいい。

「……誰が、誰を好きだって?」
「ひゃあ!」

 いきなり背後から声が掛かって、乃亜は慌てて振り返った。
 想像以上の至近距離に推し……こと、ダグラスが立っていて、思わず鍬を足元に落としそうになる。そこに彼の腕が伸びてきて、鍬の柄と乃亜の足を救った。

「す、すみません。いつのまにこんなに近くにいたんですか?」
「さあ……君が日本語でチャンピオンに話しかけていたとき、かな」
「聞いてたんですか!?」
「俺に日本語はわからないよ」
 と、答えてから、ダグラスは少し考えるように黙った。「……親父は流暢だったけどな。俺にも教えようとしてくれたのに、俺はやらなかった。今では後悔してるよ」
「ウィリアムさんが……」

 いろんな意味で胸が熱くなった。
 ウィリアムが片言の日本語を喋れたというのは曾祖母から聞いている。でも流暢というほどではなかったはずだ。つまり、曾祖母と別れてからも、ウィリアムは日本語の勉強を続けてくれたということだ。

 そして……ダグラスは『後悔してる』んだ? 日本語を学ばなかったことを?
 わたしの推しが?
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