二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 ──それで?
 今日のダグラスはなにか、お喋りな気分になる妙なキノコでも食べてしまったのだろうか?

 それでもダグラスと会話を共有できるのは嬉しかったので、最初に行ってみたいと思ったコースの名前をいくつか挙げた。

「……それで、最終的に、ピエドラ川のコースにしようってことになったんです。だって無料で入れる天然の温泉があるんでしょう?」
 乃亜は意気揚々と鍬の柄を持って答えた。
 ダグラスの動きがぴたりと止まった。
「『しようってことになった』?」
「へ?」
「ネイトと行くのか?」
「は、はい……。その、この辺りって言っても、歩いては行けないですから……」

 この辺りどころか敷地内だって車で移動しなければならない土地だ。
 なにをするにも車両は必要で、ネイトは時々時間のあるときに乃亜を乗せてくれた。なぜこういうことになったかといえば、ネイトはスマホの番号をあっさり教えてくれたからだ。

 乃亜はいまだにダグラスの番号を知らない。

 そんなわけで、実際に顔を合わせる時間はダグラスとの方が圧倒的に長くても、ネイトとのやり取りも結構あるのだ。
 いくらコロラドの荒野にいても、ときは二十一世紀である。

「いつ行くんだ?」
 本当に。
 なかなか怖いキノコだ……。
「明日の午前中です。レッスンの予定がないからって」

 乃亜が答えるとダグラスは彼の足元に視線を落とした。地面はすでに乃亜が掃いて綺麗になっている。
 ダグラスの表情が陰っていく気がしたので、乃亜は慌てて付け加えた。

「もちろん朝のケータリングは終わらせてからにしますよ! なにか新しいキノコがあるなら、それもメニューに加えて……」
「キノコ?」
「なんでもないです……。とにかくご迷惑はかけないようにしますから。そうそう、今晩の夕飯もまたわたしに作らせてください」

 ダグラスは顔を上げたが、さっきのように乃亜を見つめたりはしなかった。
 厩舎の壁がなにかとても面白いものであるかのように、じっと木製のパネルに鋭い視線を向けたままだった。

「わかったよ」
 ……とだけつぶやいて、スプリング・ヘイブン牧場の牧場主は厩舎の奥に消えていった。
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