二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
ひとまずキャビンに戻った乃亜だが、軽くシャワーだけ浴びるとマクブライト邸に向かった。今晩の夕食当番を買って出ていたからだ。
「お邪魔……します」
玄関から中に入ると、そこは静かで無人だった。ちょっと味気ないくらい綺麗に整頓されたキッチンが乃亜を迎えてくれる。
エントランス以外に明かりはついていない。でもダグラスはこの家の中にいるはずだ。もしかしたら疲れて、二階の自室で遅めの昼寝をしているのかもしれない。今日の彼は様子がおかしかった。
「キッチン、使わせてもらいますね……」
無言というのも気分的に落ち着かないので、とりあえず言うだけ言ってから照明のスイッチを入れ、冷蔵庫を開けた。今晩はハンバーグにしようと思って、冷凍されていた挽肉を朝のうちに冷蔵庫に移動させておいたのだ。
スプリング・ヘイブン牧場は馬の飼育とコテージ経営が主な収入源だが、食用牛もそれなりに扱っていて、ホセはそちらの方の責任者だという。そんなわけでマクブライト邸はほぼ使いたい放題に肉があった。
ダグラスやネイトの長身は、この無限の牛肉の供給からくるのかもしれない。
(でも、もしここに住めたら、小さくてもいいから野菜畑とか作りたいな……。使えそうな場所ならいくらでもあるし)
そんなことを考えてしまい、ハッと我に返る。
──だから『もし』よ、あくまでも『もし』住めたら!
もう雑念と煩悩ばかりだ、この牧場に辿り着いてから。挙句の果てにこんな妄想までしはじめるとは、かなり重症になってきている。
「だって、いつかは……帰るんだから……」
ぼそりと独り言を吐き出して、調理に専念しはじめた。
ダグラスに助言されたとおり、帰国の航空チケットは最長まで延期したし、帰ってもすぐに仕事があるわけでもない。実家暮らしだから向こうでの家賃もなく、ここの滞在費は無料。
おそらくこれは乃亜の人生におけるボーナスステージだ。
永遠にこのままではいられない……はず。