二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
「ノア?」
いきなりリビングの奥から声がして、乃亜は驚いて手元の包丁を床に落とした。
だって、声がした方向に顔を向けると、そこにいたのは……お風呂上がりのダグラスだったからだ。
まだ湿った肌の。
バスタオルで髪を拭いている。
上半身裸の、ダグラス・マクブライトが。
「あ、ひゃ、うぁ……」
寛大なる神のご加護により、下の方はジーンズを履いていた──ボタンの個所は開いているけど、少なくともジッパーは閉めてくれている。
そのまま奇声を上げてしまいそうになったけれど、はじめて彼のチャップス姿を見たときに晒した醜態を思い出して、なんとか口をつぐんだ。だって……。
だって!
ダグラスは髪を拭きながら近づいてきて、乃亜の目の前にくると屈んで床に落ちた包丁を拾いあげた。筋肉の鎧をまとったような背中が露わになった。あ……。
嗚呼!!
「怪我がなくてよかった」
「あ、す、すみません……。床を傷つけちゃったかも……」
「そんなことを俺やウィリアムが気にするとでも?」
ダグラスはそのまま静かに包丁を天板に置いた。
すでに手を伸ばせば触れられる距離にダグラスはいて、お風呂上がりの石鹸の匂いが鼻腔をくすぐるくらいの至近距離だ。
いつも長袖シャツが多かったから、やんわりと想像はしてもまさか……ここまで……た、たくましい……〇◎×♪△§。
「気絶しないでくれ。俺はなにもしないよ」
ダグラスは困ったみたいな、でもちょっと乃亜をからかっているような、それでいて間違いなくその言葉を信頼できる、彼にしか出せない不思議な口調で乃亜の耳元にささやいた。
ずるい。
乃亜だってこのくらい、この人を惑わすことができたらいいのに。