二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
別にここまで美しくなくても、ダグラスは乃亜に惹かれたはずだ。それでなくても我慢を強いられているダグラスを、さらに苦しめる理由が……神よ、いったいどこにある?
「ひゃあっ!」
ダグラスの手が勝手に乃亜の首筋の裏をさすると、彼女は飛び跳ねんばかりに身震いした。
「……悪い。手が勝手に」
「なっ……手は勝手に他人の首を触ったりしないんですよ、コロラドのお兄さん」
いつかのダグラスの口調を真似て、乃亜は抗議した。
──だから、なぜ。
「するんだよ、コロラドでは。時々。覚えておくといい、東京のお嬢さん」
「もう、そんな変なこと言ってるとコーヒー淹れてあげませんよ」
構わないよ。
俺はシャワーを浴びたばかりで、君もシャワーを浴びたあとで、するべきことなんて他にいくらでもあるだろう。君が付き合っていた阿呆なシェフが終えられなかった役目を、俺にさせてくれないか──ダグラスはほとんどそう言いかけた。
ほとんど。
「それは困るな」
「そうでしょう? ちょっとソファで休んでいてください。今日は午後から様子がおかしかったから」
「そうさせてもらうよ」
乃亜から離れる口実ができたことで、安堵のような落胆のような、複雑な気分に溺れる。とりあえず喉が渇いていたので、ダグラスは乃亜の後ろにあるキャビネットからグラスのコップを取った。
「ひぁ……」
すると乃亜は、妙な声を漏らしながら手近にあったお盆を胸元に当てて、ヨロヨロと一歩下がった。
そのとき、ダグラスはやっと、自分の裸の上半身がこの女性に与えうる影響を自覚した。