二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 別に自分を醜いと思ったことはない。
 ネイトのような誰からも好かれるいわゆるオール・アメリカン・ボーイではないが、大抵の成人女性はダグラスの男としての魅力を認めた。たとえば、コテージの女性客がダグラスの容姿を物欲しそうに眺めることを、嫌だとは思わない。金を稼ぐのに有利ならば、魅力はないよりあった方がいいと、その程度の認識でいた。

 しかし……乃亜が。
 乃亜がなにかを感じてくれるなら、ありがたく利用させてもらいたい。

「あの……ダグラス……?」
 彼女の隣から動かずにいると、乃亜はするすると、それこそバレリーナ特有の繊細な動きで優雅に後ずさった。
 ダグラスはそれに一歩で近づいた。

「なにを……してるんですか?」
「水を飲みたいんだ。蛇口が君の後ろにある」
「それもコーヒーと一緒に出しますからっ、ソファで休んでいてください!」

 乃亜は片手をお盆から離し、ダグラスの胸を別の手で押して距離を取ろうとした。そして素肌に指先で触れた瞬間、火傷したみたいにパッとのけ反った。
 ダグラスは乃亜の腰を取って、彼女が天板にぶつかるのを防いだ。
「あ────」

 もし……。
 もし乃亜が、将来の約束のいらない、今だけの関係を受け入れられるような女性なら。
 もしダグラスが、彼女を幸せにできるなら。
 幸せになってもいいのなら……。
 ダグラスはここで乃亜の唇を奪っていた。しかし『もし』の仮定はただ虚しいだけで、現実はどれも違う。
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