二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~
だからダグラスは自分が許されるうちで最も夢に近いことをした。少しだけ背を屈めて、乃亜の耳元に顔を近づける。
彼女のうなじから香り立つシャンプーの匂いを吸い込んで、目を閉じた。少しくらい素直になってもいい気がして、小さくささやく。
「俺が連れていくつもりだったのに」
「え……」
「なんでもない。君の言う通り、今日の俺は少し様子がおかしいんだ。あまり深く考えないでくれ」
そしてコップを天板の上に置くと、乃亜の言う通りソファに向かって、そこにどさりと腰を下ろした。せめて……コーヒーと水を彼女にサーブしてもらうくらいの我儘は許されるだろう。
違うのか……?
ダグラスはソファに座ったまま足を投げ出して、手のひらで目を覆って心の嵐が去るのを待った。
しばらくすると上品な足音が近づいてきて、ソファの前のコーヒーテーブルになにかが置かれる音がした。
「ありがとう」
ダグラスは目を閉じたまま言った。
「どうしたしまして……。他になにか欲しいですか?」
──君が欲しい。
許されるなら。
そんな答えが喉から出かかって、ダグラスは目を覆ったまま口元だけで薄く微笑んだ。いったい自分は、あの世界一愚かなシェフとなにが違うのだろう。
「キスが欲しい。君からの」