二度目の永遠~ある夏にコロラドで見つけた牧場主との運命の恋~

 くそ。ダグラスは耳をつんざくような乃亜の悲鳴を覚悟した。
 もしくは平手打ちが飛んでくるか、それこそネイトにスマホで報告されて、ふたりに嘲笑われるか……。
 さっき拾ったばかりの包丁を差し向けられても文句は言えず、おそらくダグラスは抵抗しない──。


 ちゅ。


 温かくて柔らかくて……さっき嗅いだばかりの匂いのするなにか素晴らしいものが、ダグラスの頬に触れる。

 ダグラスは目を見開いてソファから腰を浮かせた。
 彼のすぐ横には、ソファの上に両手をついて四つん這いのような格好になった広瀬乃亜がいて、上目遣いにダグラスを見つめながら、頬を桃色に染めていた。

「────っ!」
 ダグラスが飛び跳ねるように後じさると、足元にあったコーヒーテーブルがあらぬ角度に傾いてコーヒーと水がこぼれた。

「ノア?」
「はい……?」
「今のは……」
「あ、あなたが欲しいって言ったから……。だめでしたか?」
「ノア!」
 ダグラスは喉が痛くなるくらいの声で叫んだ。

 三十五年。
 三十五年も男として生きてきて、下半身の制御どころか頬へのキスだけで昇天しそうになるとは、悲劇も喜劇も通り越して……病気だ。

 愛という名の不治の病。ダグラスのそれは乃亜という名前で、東京生まれの元バレリーナの形をしているらしかった。

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